振袖は高価な買い物です。購入(レンタル)を考えている人にとって 高価な買い物だけにしっかりしたいい着物を購入(レンタル)したいと思う人は多いでしょう。ただ 普段着物を見慣れていない人にとっては、安物と高級品の区別はつきにくいものです。色、柄などの好みは、もちろんあると思いますが、生地、織り方 染め方などから見た高級品とは? 振袖の高級ブランドとは? どのような着物なのか調べてみました。
目次
生地の違い
正絹とポリエステル
正絹(しょうけん)とは、絹100%の糸のことです。
振袖の場合は正絹の着物が多いですが、中には、ポリエステルの着物もあります。ポリエステルの振袖は安いですし、着物に詳しくない人でも、触った感触や見た感じで素材がポリエステルであるとわかります。
糸の違い
絹の着物でも、外国産の糸と国産の糸があります。しかし近年日本の養蚕農家の高齢化、後継者不足でかなり減少してしまいました。これに伴い日本の織物工場も撤退しています。
国産の絹糸だけを使い、国内の織物工場で織られている着物はかなり少ないのが現状です。目で見たり、触った感覚だけで国産の絹糸かどうかを見極めるのは、かなり難しいと思います。
そこで参考になるのが反物に貼られているシールです。国産か外国産かがわかります。
日本の絹マークの表示対象
日本で製織された白生地及び日本で染織された和装品(きもの(反物及び仮絵羽)、帯、和装小物及び裏絹)とします。
ジャパンシルクセンターより引用
糸は外国産でも、日本で織られた生地で日本で染めた場合、日本の絹というシールが反物に貼られています。
純国産絹マークの表示対象
国産の繭から繰糸した生糸(紬糸等を含む)(以下これらを総称して「生糸」という)を用いて、国内で製織された白生地及び国内で染織された和装品(きもの(反物及び狩絵羽))、帯ほか一般財団大日本蚕糸会が認めた和装小物。
ジャパンシルクセンターより引用
日本産の糸で日本で織られた場合は純国産絹マークのシール又はタッグがついています。
但し国産生糸と外国産生糸の価格に大きな差がある訳ではなく、加工度合いが高まるに応じて付加価値が大きくなると農林水産省では言っています。絹糸の中にもいろいろ種類があるようですし、糸の価格は、国産でも安いものから高級なものまでいろいろあるようです。
詳しく知りたい方は農林水産省資料をご覧ください。
生地の織り方
着物の場合、一般的によく言われるのが 安物の着物は、生地がぺらぺらだと言われますが、見分けやすいのは、生地に重みがあるかどうかです。織り方の違いで安物の着物は使っている糸の本数が少なく 高級な着物は、糸の本数が多いため、重くなります。
但し国産の絹の場合、外国産より軽いようですので、重さだけで決めてしまうのは、難しいかもしれません。
染め方の違い
インクジェットプリント
プリント印刷された着物のことですが、最近は、インクジェットプリントの振袖が大変多いです。特にレンタルの振袖は、インクジェットが多いですね。チェーン店の呉服屋さんで売られている振袖もインクジェットの振袖が多いです。
インクジェットプリントと手染、型染の振袖の違いは、プリントの場合 生地の裏が白いのです。反物であれば、すぐに確認できますが、仕立ててある着物は、裏地がついている為、確認できません。そして、最近は表地だけでなく裏側もプリントしている着物もあるそうです。
インクジェットは機械で簡単にプリントできるので大量生産が可能です。そのため安いのです。
着物を普段からよく見ている人には、見ただけで判断できるのですが、普段着物を見慣れていない人には、見ただけでは判断しづらいです。
型染と手描染
職人さんの手仕事で染められた染め方にもいくつかの種類があります。京友禅の染め方の種類を案内します。
1.型染
京友禅の型染とは、渋柿紙の型紙と色糊を用いて染める友禅の技法で、明治時代に始まった技法です。1つの型紙で何枚かの着物を作ることが可能なため手描きに比べ量産が可能です。
加賀友禅には板場友禅という技法があり、板の上に生地を置き型紙を置いて染めます。
2.手描染
手描き友禅とは、紙に一枚ずつ図案を書いて手作業によって書き進めていくため非常に手間がかかります。
1枚の反物に下絵→糸目糊置き→挿し→伏せ糊置き→引染めなどの工程をすべて手作業でします。型染と違い量産できません。
着物の値段の違いは、手間の違いと言っても過言ではありません。型染に比べ手描き友禅は高く、高価な着物には手間がかかっています。
染め方の違いを見極めるには
見た目で判断できない場合に見極める手段のひとつとして証紙があります。反物から振袖を作る場合、反物に証紙が貼られているか確認してみて下さい。
京友禅の場合
京友禅の場合には、京友禅証紙というシールが貼られています。
(表示の対象)
京友禅証紙が貼付できるものは、主たる工程が京都地域で生産される友禅染の絹製品(原則)だけです。他産地及び海外で加工された場合は貼付できませんので、純然たる京都産友禅であることの証です。
京都友禅共同組合より引用
友禅染技法を用いて京都で染められた商品とありますが、インクジェットプリントであっても京都で染められていれば、この証紙を貼ることができるようです。インクジェット=友禅染技法?ギモンが残ります。
京友禅の着物で、京都工芸染匠協同組合の組合員の手描染の着物の場合は京手描友禅証紙が貼られています。
証紙を貼付する作品は、以下の全項目全てに該当しなければならない。
・京都工芸染匠協同組合の組合員が創作した作品であること。
・染色工程が京都及び京都近郊において創作されていること。
・主要工程が京手描友禅により創作されていること。
・自生地(素材)は、日本国内において織られた絹織物であること。
・染匠がプロデュースし、京友禅の洗練された意匠と京手描友禅の高度な、加工技術を駆使したものであること。
京都工芸染匠共同組合より引用
但し手描き友禅の染匠でも京都工芸染匠協同組合の組合員でない方もいらっしゃるので、証紙がないから手描き友禅でないとは限りません。
加賀友禅の場合
加賀友禅の場合も加賀友禅証紙という証紙があります。赤色は、手染友禅の証紙。紫色は板場友禅呼ばれる木型を用いた型染の証紙です。
加賀友禅より引用
加賀友禅の場合は、京友禅と違い染物のいろいろな工程を一人で行います。加賀染振興協会に登録している技術者であれば落款を登録している為落款が押されています。加賀友禅作家と言われる人で、落款を見ればその作家が誰なのかわかります。有名な作家の着物であれば、振袖の価値も高くなります。
加賀友禅より引用
誰の落款なのかは、加賀染振興協会のサイト加賀友禅の落款検索で調べることができます。
伝統工芸士、人間国宝の着物
伝統工芸士の着物
伝統工芸士に認定された人の反物には、伝統証紙が貼られています。
伝統工芸品の表示のために、一般財団法人伝統的工芸品産業更新会が発行する伝統マークを使用した証紙を「伝産証紙」といいます。経済産業大臣が指定した産地の共同組合が、経済産業大臣の認定を受けた検査方法に従って検査を行い、合格した伝統工芸品にのみ貼られる証紙で、伝統を誇る手作りの証しといえます。
京都友禅共同組合より引用
工芸認定士に認定されている人は日本の工芸認定士で検索することができます。染織品は、型染部門、手描部門、仕上部門に分かれています。
人間国宝の着物作家
人間国宝の着物は、人間国宝一覧で確認することができます。
人気作家、高級老舗店の振袖
人気作家の振袖
皇后陛下、紀宮様などの皇室献上の友禅作家 藤井寛さんの振袖、佳子様が着用された久保耕さんの振袖など
高級着物店の振袖
京友禅の高級老舗店千總の振袖、絞り染めで有名な藤娘きぬたやさんの振袖、辻が花の桐屋さんの振袖など
まとめ
振袖を購入するにあたり、色や柄などの好みはもちろんありますし、色柄は選ぶ基準にはなると思いますが、高価な買い物だけあって、それだけではなく、振袖そのものの価値はどうなのかと考えてしまうのは、当然です。
着物を見ただけで高級かどうか判断できなくても、上記のようなシールが貼られていたり、落款があれば着物の価値を見極めるひとつの基準となります。作家や老舗呉服店の着物も購入時参考にしていただければといいと思います。
但し同じ作家、同じ高級老舗店で買った着物でも、着物によって値段はかなり違いますので注意してください。
ある程度、購入する振袖の価値を見極めたうえで、納得のいくいい振袖選びをしていただきたいと思います。
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